Hyperattention – Selected Dijital Works vol 1
エジプトのカイロをレペゼンとするトラックメイカーDijitこと、Hashem L Keleshのファースト・アルバム。2013-2018年の5年間に録りためられた音源を、UKのレーベルYouthからリリース。これほど質の高いトラックが2020になって漸くリリースされたというのは、エジプトの新しい音楽を巡る状況には、まだまだ発展の余地があるということだ。内容のほうはエジプトでしか作り得ない乾いたTrip Hop。Trickyの初期作品を思わせる物憂くダルな曲が並ぶが、UK産との大きな違いはその湿度だ。乾いた諦観と絶望。これは今を生きる私たちの感情と同質のものだ。2020になってのリリースはタイムリーだったと思う。今年、The BUG Ft Dis FigがTrip Hopをブラッシュアップしたかのようなアルバムをリリースしたが、ちょうど良い音楽のタイムサイクルだと思う。たぶん、これが2013にリリースされていたら「古い音」とされて埋もれてしまった可能性がある。音楽とは不思議なもので、世代の交代に伴うタイムサイクルが必ず発生する。そしてリバイバルされたときには必ず時代と環境に適応する「変異」を遂げているものだ。Trip Hopがエジプトで変異し、より現代的なBASS音を伴って心に感染する。次作も期待のアーティスト。
