No Mercy
MARRONEO CREW
2006
レゲトンの進化過程に於いてDJ Nelsonと並ぶ、音楽面だけに限ればDJ Nelsonを超える革新性をもたらしたのがRafy Mercenarioである。DJ Nelsonが”The Flow”でデジタルに落とし込んだレゲトンのビートに、更にラテン音楽の持つグルーヴ感を加え、レゲトンが他のどのジャンルとも異なる、確立した個性を獲得したのは彼の手腕が大きい。時は2000年代に入り、DJ Nelsonは自らのレーベルFlow Musicを中心にマルチメディアなビジネスを展開していく。レゲトンはプエルトリコを中心に市民権を得たかのように見えたが、”Underground”は依然として存在し、その地下のクラブDJとして毎夜独自のビートを磨いていたのがRafy Mercenarioだった。DJ Nelsonの作ったタテ乗りのリズムに独特のズレを加え、デジタルなビートをより”ボリクア”的に肉体化していく。DJ Nelsonは彼の才能をイチ早く発見し、2003年には最初の共演盤”Kakoteo Mix”をリリースしている。そして2006年、初のリーダーアルバムとしてリリースしたのがこの”No Mercy”である。そこから遡ること10年前、”レゲトン王”Daddy Yankeeがドロップした1stアルバムと同じタイトル。これは偶然ではない。表ジャケはRafyを含めた目つきの悪い若者四人、裏ジャケには”MARRONEO CREW”として参加MC達がクレジットされている。”MARRONEO”とはスペイン語で”浅黒い”という意味だが、Daddy Yankeeにリスペクトを送りつつ、いま一度原点に立ち返り”ボリクア人によるボリクア人のための音楽=レゲトン”を創造しようとする強い意志が見て取れる。全編デジタルでありながら、原始的でブルータルともいえる躍動感溢れるビートに貫かれている。MCも商業性を無視した野卑な叫びだ。ここから数年間、彼はボリクア人の側からレゲトンを先導していくことになる。絶対名盤。必聴。