Holy Palm
作家、DJ、ジャーナリストでもあるFlora Yin-Wongのデビューアルバム。全編がフィールド・レコーディング素材で作られており、それを電子処理して繋げることで壮大な音の地球儀を作り上げている。フィールド・レコーディングは北極圏の雪を踏む足音から、バリのガムラン、ブエノスアイレスの祝祭、東京のクラブ、インドネシアの水田、シカゴの地下鉄、中国の僧侶の読経、etc…、が地理上の物理的距離をワープし無秩序に、そして極めて音楽的に配置し直されている。バロウズのカットアップ理論を想起させたりもするが、攪乱的と言うよりも瞑想的に世界を個人の中で捉え直そうという試みなのだと思う。グローバル化が決して明るい未来でないことが露呈してしまった2020だったが、このアルバムは差異を当然のこととして連結可能であることを「音楽」として提示する。これが楽観的に過ぎるかどうかは個々人の判断にまかせるとして、聴いていて非常に気持ち良い。