Mabe Fratti

Será Que Ahora Podremos Entendernos

「私たちは今、お互いを理解できるでしょうか?」

Mabe Fratti

どうしても、このアルバムは紹介しなければならない。いわく言い難い衝動で今この文章を書いている。年間何千枚のアルバムを聴いているか分からないが、そう思わせてくれる作品は実は年に数枚しかない。Satomimagaeの新作とか、VANITYの諸々とかは私が下手な文章で紹介しなくてもプロの方々が上手に紹介してくれている。残念ながら自分の場合、衝動スイッチがONにならないと、怠惰と鬱にかまけて更新することもままならない。久しぶりに覚醒する作品に出会った感想文は「凄い、美しい、脆く強い!」。

Mabe Frattiはグアテマラ出身の女性チェロ奏者だ。現在はメキシコを拠点に活動している。この作品は彼女のセカンドアルバム。パンデミックの状況下、メキシコでもスタジオの密室でセッションを重ねることは困難で、メキシコのベラクルスにあるジュース工場でこのアルバムは制作された。サウンドは彼女のモダンクラシカルな素養が中心軸となって展開するが、チェロ、ミニマルなシンセ、フィールドレコーディング、メタルパーカション、ギターのフィードバックノイズがフリーフォームに絡む。そして彼女の傷痕を内包した歌声は工場という現代の聖堂でコーラルの如く響く。現在の不確かな世界を的確に音像化しながら、救いと自由を聞くものに提示する声と音。彼女は英訳した歌詞で「私たちは今、お互いを理解できるでしょうか?」と問いかける。その答えは、”Será Que Ahora Podremos Entendernos”。2021年、少なくてもオリンピックより重要な作品。聴いたほうがいいよ。

UnknownOJI

from North Side Tokyo OJI, wiz LOVE.

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